自己免疫性自律神経節障害(Autoimmune autonomic ganglionopathy, AAG)とは
自己免疫性自律神経節障害(Autoimmune autonomic ganglionopathy, AAG)は体内の免疫システムが誤って自律神経系に反応して攻撃してしまう、まれな自己免疫疾患です。兆候や症状はさまざまですが、ひどい起立性低血圧、失神、便秘、瞳孔の固定・散大、尿閉、ドライアイ、ドライマウスがあらわれる場合があります。
AAGの原因はまだよくわかっておらず、治療方法は症状の重さや兆候や症状などによって異なります。AAGは希少疾患のため、まだ標準療法は確立していませんが、血漿交換、大量免疫グロブリン療法、ステロイド、免疫抑制剤によるさまざまな効果が報告されています。
患者さんの約1/3は治療せずに自然に症状改善する可能性がありますが、完治はしばしば難しい状況です。
AAGの症状
AAGでは以下のような症状があらわれることがあります。
- 数週間から数年のひどい起立性低血圧
- 失神
- 便秘と蠕動運動障害
- 尿閉
- 瞳孔の固定・散大
- ドライアイ・ドライマウス
またAAGでPOTSのような症状があらわれる場合もあります。
AAGの原因
AAGの原因はよくわかっていませんが、免疫システムが自律神経節の受容体を攻撃してしまうのではないかと推測されています。
患者さんの約1/3~2/3は抗gAChR抗体(抗ガングリオニックアセチルコリンレセプター抗体)の抗体価が高いことが関係していると考えられています。
また患者さんの約60%は先行感染や他の疾病の後に発症しています。
AAGの治療方法
AAGは希少疾患のため、まだ標準療法は確立していませんが、専門家の間では血漿交換、大量免疫グロブリン療法、ステロイドパルス療法、リツキサンのような免疫抑制剤が使われています。
・Genetic and Rare Diseases Information Center, GARD Autoimmune autonomic ganglionopathy
国内の状況
AAGに関する厚生労働省の研究班が発足しています。
・厚生労働科学研究 難治性疾患政策研究事業「自己免疫性自律神経障害の全国調査、診断基準策定、国際的な総意形成」班
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- 総説 自己免疫性自律神経節障害. 中根俊成. 日本神経学会 学会誌「臨床神経学」59巻12号 2019年
- Autoimmune postural orthostatic tachycardia syndrome. M.Watari, S.Nakane, A.Mukaino, et al. Ann Clin Transl Neurol 2018;5:486–92.
(POTSと抗gAChR抗体の関連について書かれています/英語) - <シンポジウム(2)―3―4>免疫性神経疾患の新しい展開:脳から自律神経障害まで 自己免疫性自律神経節障害. 中根俊成. 日本神経学会 学会誌「臨床神経学」53巻11号 2013年
以下の各書籍に自己免疫性自律神経節障害について書かれています。
毎日新聞に記事「コロナ後遺症に似た自律神経障害」が掲載されました
https://potsanddysautonomiajapan.org/aag/221130_media_mainichi/
■ 自律神経障害の概要 |
■ 自律神経障害のさまざまな疾患 |
■ 自己免疫性自律神経節障害(AAG) |
最終更新日:2023年1月24日